2006年 05月 22日
「ハイランド」
パイオニア2のとある場所に、そこはあった。本星にあったという古風な作りをしたその店は、昼はレストラン、夜はバーになるらしい。店内はドアを開けるとレジが右にあり、そこから10席ほどが並ぶカウンターが、目の前の奥、店の中ほどまでに向かってある。反対に左側から一番奥にかけてのL字の窓際には、4人用のテーブルがきちんと並んでいた。
そして少々狭いと思われるその店の中にはカウンター右のレジのそばに置いてある蓄音機と呼ばれる本星のアンティークからジャズが流れ、外のめまぐるしく変わる日常と別の時間が流れているようだった。

今日は昼と夜の間にある準備中に、ドアの鈴が鳴った。
チリンチリン
ハンターであろうか、その男は程よい顎髭を生やした男性で、髪の中に白髪の部分が混じってはいるものの顔は若い、何とも不思議な男だった。

「いらっしゃい、けどあいにく準備中なんだがね」
 「まったくお堅いやつだな。お客さんなんだ、大事にしろよ」
「お客さんは準備中には入ってこないんだがなぁ」
 「とりあえずいつものを」
「……かしこまりました」

いつもの様子にいつもの気の抜けた返事。すぐさまその男の前には、グラスに注がれた1杯のミルクが出された。
「で、今日の用事は?」
男がミルクに手をかけると同時に質問は投げかけられる。それを流して男は一気にミルクを飲み干した。
 「ぷはぁ!ん?ああ、今日はいいレコードが入ったんで、それを紹介しに、な」
「ほほぅ」
 「ほら、これだ」

そう言うと男は、ズボンの右のポケットからごそごそ探すと、4つ折にたたまれた紙を取り出した。
 「どうだ?気に入ったか?」
まだ全てを見通す事の出来ぬタイミングで男はそう言う。
「まったくお前は……。よくもまぁいつもいつも、これだけのものを持ってくるなぁ」
 「ははは、見聞は深めておいて損はないだろう?それに」
「それに?」
 「こんな店じゃ退屈だろうさ」
「ははは、そうでもないぞ。料理は意外と楽しいもんだ」
 「俺にはわからん世界だね」
「それに」
 「それに?」
「人生で起こることは、全て皿の上でも起こるもんさ」
 「だれだ、そりゃ」
「ミッシェル・サラゲッタ」

そう言って紙を元に折りたたみしまうと、一呼吸をした後にバックヤードに向かって声をかける。
「おおい、ラグナイト!」
バックヤードからラグナイトが顔だけを覗かせるようにしてこちらを見ている。
 「なんでしょう、マスター」
「悪いがシャルテさんを呼んできてくれるか、ちょっと急用でね」
 「分かりました、マスター」
「あ、あとね、ZANさんが好きないつものが切れそうなんだ。悪いが買ってきてくれるかい?」
 「分かりました、マスター」

チリンチリン
ラグナイトがまるで急いでいるようには見えない落ち着いた足取りでシャルテを呼びに外に出たあと、男もすぐさま席を立った。
 「じゃ、俺は失礼するよ」
「ああ、分かった。いつも通りでいいんだな」
 「今回は大物だからな、こっちにちょっと色つけろよ」
「そうしたらツケを返してくれるんだろうな」
 「それはそれ、これはこれ、だぜ?」
「ふぅ、しょうがないな」
背中越しにでも笑みが分かる様子で、男は左手を上げて挨拶をし店を出て行った。
チリンチリン

だれもいなくなった店内で、独り言だけが響く。
「さて、やるかね」


ここは「ハイランド」。パイオニア2にある、いたって普通の店。
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by far_gaia | 2006-05-22 18:48 | PSO・PSU


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